バイリンガル保育士のぐりです。
小学校でも英語の授業が本格的にはじまり、世間では英語学習の必要性がより大きくなっているように感じます。
「できないよりは、できた方がいい」とすぐに英語が必要なわけではないけど将来のお子さまのためにも英語教育を検討されている保護者の方は多いのではないでしょうか。
そんな保護者の方々へ、子供の成長に関するプロである保育士の視点から、適切な英語学習の開始時期について解説していきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
英語学習は早い方がいいってほんと?
子供のときの方が大人に比べて言語を覚えるのは早いというのはみなさんイメージしやすいと思います。
これは本当です。
なぜなら子供は自然にお母さんお父さんなど身近な大人から言葉を覚えて、言葉が話せるようになります。2歳ごろにはきちんと意思疎通がはかれるようになるのは、人間にはそれだけ早く言語を習得するスキルがあるからです。
ここで子供の言語の成長過程を詳しく見てみましょう。
0〜1歳(乳児)
赤ちゃんは「あー」とか「うー」などという音(クーイング)を出し始め、たいてい1歳前後で意味のある初めての言葉、初語が出ます。「まんま」「ママ」という言葉が多いです。
1歳半ほどで2語文「わんわん いた」「ママ 来た」などの言葉が出てくる子もいます。
この時期には、日本語、英語という言語の区別なく言葉を覚えていけるでしょう。
たとえば片方の親が外国人で生まれた時から日常的に英語を聞いている子は自然にバイリンガルになっていくのはこの理由からです。その子たちは成長してからもネイティブレベルに近いレベルで不自由なく両言語使えるようになるでしょう。
2〜5歳(幼児)
2歳から3歳にかけて、2語、3語文で会話ができるようになり、大人とある程度意思疎通ができるようになります。2歳ごろは「語彙爆発」とも呼ばれ、急速に言葉が発達していきます。
ですが、まだ自分の気持ちを上手に言葉で現すことはできないので、保育園などではお友達に手が出てしまい、叩かれた、叩いてしまったという先生からの報告が多い時期です。
この時期に、「おもちゃ かして」などお友達との関わりを生かして言葉を覚えていきます。
5歳児(年長)になるころには読んだり書いたりすることもできるようになり、会話以外からも言葉を覚えられるようになります。
日本語の習得と一緒に英語も自然に習得できる時期なのでインターナショナルプリスクールなどに通い始め外国人の先生と長い時間過ごすようになるとあっという間に話が理解できるようになり簡単なやりとりができるようになります。
ひらがなを覚えるようにアルファベットを覚えることも楽しみながらできるでしょう。
卒園するころには抵抗なく外国人の方とお話できるようになったり、海外で話しかけられても問題なく会話できるようになったりとバイリンガルになっていく子も多く見られます。
この時期は、まさに英語を英語で学ぶのに最適な時期です。
6歳〜(小学生以上)
小学生以上になると「勉強」が始まり、会話としての言語だけではなく学習して意識的に言語を身につけることができるようになります。文法なども理解できるようになるのがこの時期です。
集中力もついてくるので、読み書きから言語を習得することができるようになっていきます。この時期に読解力や抽象的な表現力をより理解できるようになるので、どれだけ本を読んだり映画を観たりして言語に触れるかで語彙力や表現力に差が出てくるでしょう。
このように、「勉強」として言語を身につける小学生より前に子供たちは言葉を覚えます。早い時期に英語を始めれば1つの言語として自然に身につき、習得も早いことが分かるかと思います。
小学生になってから英語を始めると、恥ずかしさから失敗を恐れて英語を発言したくなかったり、日本語の能力がある程度高くなっているので英語で何と言っていいか分からないときに日本語に逃げてしまいやすくなったりします。
そのため、英語学習は遅くとも小学生になる前には始めた方がお子さまにとって負担なく身につけることができるでしょう。
セミリンガル?
ここで早すぎる英語教育から「セミリンガル」を懸念される方もいるのではないでしょうか。
セミリンガルとは二か国以上の言葉は知っているが、どちらも年齢相応のレベルまで達していない、という状態でどちらも中途半端になってしまっていることを言います。
ネガティブな意味合いで使われていることから、バイリンガルな子への差別的表現にもなってしまうので現在では、「ダブル・リミテッド・バイリンガル」と呼ばれるようになっています。
詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください。
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ダブル・リミテッドは、会話力だけでなく認知能力としての言語習得レベルが低い状態のことを言います。大人同士の会話を理解できないなど、どちらの言語も子供レベルというとイメージしやすいかと思います。
小学高学年になっても1、2年生の読解力しかないようなレベルですね。
私が見てきた子たちではこのようにダブル・リミテッドになった子はいません。日本人家庭で日本で育っていると、やはり日本語が母国語になるので家庭での会話や社会での会話は日本語です。なので自然と日本語の能力は年齢と共に上がっていき、抽象的な表現も理解できるようになりますし、年齢相応の言語能力を身につけていきます。
1つ注意点としてあげるなら、親の母国語でない言語を無理に子供に使いすぎることです。
ダブル・リミテッドは複数の言語がどれも年相応のレベルに達していないことを表します。つまり母国語と呼ばれるように読み書き会話も問題なくできる言語が1つもない状態です。
親の母国語(例えば日本語)でのサポートが少なく、かつ、二か国語目(例えば英語)の言語も言語能力を上げるほどのサポートができないとどちらの言語も中途半端になってしまうのが想像できるかと思います。
このとき父親と母親の出身国が違う、いわゆるハーフの子たちはどうなのか考える方もいると思いますが、この場合はそれぞれの親が自分の母国語のみを子どもに使うことで、子どもは両方の言語を自然に習得し、言語能力も年相応に上がっていくと考えられます。
ハーフの子によってどちらの言語が得意かは違ってきますが、少なからず1つは不自由なく使用できる言語を身につけることができるのでダブル・リミッテッドを心配することはないでしょう。
このように早くから英語教育を始めたからダブル・リミテッドになる、ということではなく、母国語という読み書き会話が問題なくできる言語がないという点が問題点なので、お子さまの言語能力の発達を意識しながらサポートしていくことでこの問題は解決できます。
英語学習を始める最適な時期
子どもたちの言語習得過程から考えて、0歳から英語に触れていくことで自然に英語が身近な存在になり抵抗なく身についていくことが期待できます。
この時、ネイティブレベルの英語を話せる人が近くにいないからCDやテレビでたくさん英語を聞かせようと無理をする必要はありません。赤ちゃんや幼児は大人とのスキンシップやアイコンタクトを通してコミュニケーションを取り、言語を習得していくので、英語学習を重視しすぎてこの親子のコミュニケーションが欠けないように気をつけてください。
英語学習に大事なのは、子供自身が英語を楽しいと思えることです。
早い時期から英語を身近なものとして、親子一緒に楽しむことがお子さまの英語学習に大事なことだと思います。
まとめ
英語学習は小学生になる前のなるべく早い時期に始めることで、子供たちは抵抗なく楽しく身につけることができます。英語を英語で学ぶことができるので、日本語からの変換ではなく、より自然なネイティブ表現も身につけることができるでしょう。
母国語に影響を与えてしまう、ダブル・リミテッド・バイリンガルが心配なときはお子さまとの日本語での会話を大事にし、日本語の読み聞かせなどで年齢にあった言語能力発達のサポートを意識することでこの問題は解決できます。
なによりも、お子さまと一緒に親も英語学習を楽しむことで「英語は楽しい」と感じるのが大切です。
子供は学びの天才。
この時期にたくさん英語に触れてみてください。